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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)26号 判決 1969年4月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小田村元彦の上告理由第一点について。

従前の土地の一部を賃借するにすぎない者は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめて当該部分について現実に使用収益をなしうるにいたるのであつて、いまだ指定を受けない段階においては仮換地について現実に使用収益をなし得ないと解するのが、当裁判所の判例の趣旨(当裁判所大法廷判決昭和三四年(オ)第八四二号、同四〇年三月一〇日民集一九巻二号三九七頁)とするところである。

原判決の適法に確定したところによると、被上告人は、佐世保市谷郷町一三番宅地七四坪五合三勺、同町一四番宅地六四坪六合九勺、同町一五番宅地一二坪八合九勺(以上合計一五二坪一合一勺)を所有し、このうち一四番の宅地のうち北東側五〇坪を建物所有の目的で上告人に賃貸していたところ、前示三筆の土地については、長崎県知事の施行する特別都市計画法に基づく区画整理により、昭和二四年一二月一四日施行者から、本件宅地(五三坪八合九勺)および北に隣接する宅地(二四坪一合六勺)がその換地予定地として指定されたが、上告人において施行者に対して借地権の届出をしなかつたため換地予定地上に借地部分の指定がされなかつたというのであるから、上告人は、右換地予定地たる本件土地について、特段の事情のないかぎり、当然には使用収益権を有しないことは、前記判例の趣旨から明らかであり、これと同旨の原判決の判断は相当である。

また、土地の区画整理に基づく換地にさいしても、上告人の借地の範囲を変動しない旨の上告人の主張に対しては、原判決はこれを認めがたい旨を判断しているのであり、右事実判断は、その挙示の証拠関係に照らし、当審も正当として、これを是認することができる。

原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、または原判決を正解しないことに基づいて、原判決を非難するものであり、採るをえない。

同第二点について。

原判決は、所論の合意があるとすると、換地予定地について上告人が使用収益しうる範囲について確定することができるものとして、所論の主張について判断し、結局、これを否定したものであり、原判決には所論のような違法はない。

所論は、原判決を正解しないか、または独自の見解に立つて原判決を非難するものであり、採るをえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本正雄 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小郷)

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